2003年から06年に執筆、データ化した文献のウェブサイト金子文子の生き方をブログにもアップ


by pugan

金子文子、天皇国家批判 2003年7月3日ウェブサイトにアップ

金子文子の生き方・ウェブサイト版2003年7月

「私は予て人間の平等と云う事を深く考えて居ります。

人間は人間として平等であらねば為りませぬ。

其処には馬鹿も無ければ利口も無い強者もなければ弱者も無い。

地上に於ける自然的存在たる人間としての価値から云えば

総べての人間は完全に平等であり、

従って総ての人間は人間であると云う只一つの資格に依って

人間としての生活の権利を完全に

且つ平等に享受すべき筈のものであると信じて居ります。

具体的に云えば人間に依って嘗て為された為されつつある

又為されるであろう処の行動の総べては、

完全に人間と云う基礎の上に立つての行為である。

……此の心持つまり皇室階級とし聞けば、

其処には侵す可からざる高貴な或る者の存在を直感的に

連想せしむる処の心持が恐らく一般民衆の心に根付けられて

居るのでありましょう。

語を換えて云えば、日本の国家とか君主とかは僅かに此の

民衆の心持の命脈の上に繋り懸って居るのであります。  

 

 元々国家とか社会とか民族とか

又は君主とか云うものは一つの概念に過ぎない。

処が此の概念の君主に尊厳と権力と神聖とを附与せんが

為めにねじ上げた処の代表的なるものは、此の日本に

現在行われて居る処の神授君権説であります。

苟も日本の土地に生れた者は小学生ですら

此の観念を植付けられて居る如くに天皇を以て神の子孫であるとか、

或は君権は神の命令に依って授けられた者であるとか、

若くは天皇は神の意志を実現せんが為に国権を握る者であるとか、

従て国法は即ち神の意志であるとか云う観念を

愚直なる民衆に印象付ける為めに架空的に捏造した

伝説に根拠して鏡だとか刀だとか玉だとか云う物を

神の授けた物として祭り上げて鹿爪らしい礼拝を捧げて完全に

一般民衆を欺瞞して居る。  

 
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 斯うした荒唐無稽な伝説に包まれて眩惑されて居る

憫れなる民衆は国家や天皇をまたとなく尊い神様と心得て居るが、

若しも天皇が神様自身であり神様の子孫であり日本の民衆が

此の神様の保護の下歴代の神様たる

天皇の霊の下に存在して居るものとしたら、

戦争の折に日本の兵士は一人も死なざる可く、

日本の飛行機は一つも落ちない筈でありまして、

神様の御膝元に於て昨年の様な天災の為めに

何万と云う忠良なる臣民が死なない筈であります。  

 

 然し此の有り得ない事が有り得たと云う動かす事の出来ぬ事実は、

即ち神授君権説の仮定に過ぎない事、

之れに根拠する伝説が空虚である事を余りに

明白に証明して居るではありませぬか。

全智全能の神の顕現であり神の意志を行う処の

天皇が現に地上に実在して居るに拘らず、

其の下に於ける現社会の赤子の一部は飢に

泣き炭坑に窒息し機械に挟まれて惨めに

死んで行くではありませぬか。

此の事実は取りも直さず天皇が実は一介の肉の塊であり、

所謂人民と全く同一であり平等である可き筈のものである事を

証拠立てるに余りに充分ではありませぬかね。

御役人さん左様でしょう。……

 

 寧ろ万世一系の天皇とやらに形式上にもせよ統治権を

与えて来たと云う事は、日本の土地に生れた人間の最大の

恥辱であり、日本の民衆の無智を証明して居るものであります。  ……

 

 学校教育は地上の自然的存在たる人間に教える最初に於て

<はた>(旗)を説いて、先ず国家的観念を植付ける可く努めて居ります。

等しく人間と云う基礎の上に立つて諸々の行動も只それが権力を

擁護するものであるか否かの一事を標準として

総ての是非を振り分けられて居る。

そして其の標準の人為的な法律であり道徳であります。

法律も道徳も社会の優勝者により能く生活する道を教え、

権力への服従をのみ説いて居る法律を掌る警察官は

サーベルを下げて人間の行動を威嚇し、

権力の塁を揺す處のある者をば片っ端から縛り上げて居る。

又裁判官と云う偉い役人は法律書を繰っては人間としての

行動の上に勝手な断定を下し、人間の生活から隔離し

人間としての存在すらも否認して権力擁護の任に当って居る。 ……

 

 地上の平等なる人間の生活を蹂躙している権力という悪魔の

代表者は天皇であり皇太子であります。

私が是れ迄お坊っちゃんを狙って居た理由は此の考えから

出発して居るのであります。

地上の自然にして平等なる人間の生活を蹂躙して居る権力の

代表者たる天皇皇太子と云う土塊にも等しい肉塊に対して、

彼等より欺瞞された憫れなる民衆は大袈裟にも神聖にして

侵すべからざるものとして、至上の地位を与えてしまって

搾取されて居る。

其処で私は一般民衆に対して神聖不可侵の権威として

 

彼等に印象されて居る処の天皇皇太子なる者の

実は空虚なる一塊の肉の塊であり木偶に過ぎない事を明に説明し、

又天皇皇太子は少数特権階級者が私服を肥す目的の下に

財源たる一般民衆を欺瞞する為めに操って居る

一個の操人形であり愚な傀儡に過ぎ無い事を

現に搾取されつつある一般民衆に明にし、

又それに依って天皇に神格を附与して居る

諸々の因習的な伝統が純然たる架空的な

迷信に過ぎない事、従って神国と迄見做されて居る

日本の国家が実は少数特権階級者の私利を貪る為めに

仮説した内容の空虚な機関に過ぎない事、

故に己を犠牲にして国家の為めに尽すと云う日本の

国是と迄見做され讃美され鼓吹されて居る彼の忠者愛国なる思想は、

実は彼等が私利を貪る為めの方便として

美しい形容詞を以て包んだ処の己の利金の為めに

他人の生命を犠牲にする一つの残忍なる慾望に

過ぎない事、従てそれを無批判に承認する事は

即ち少数特権階級の奴隷たる事を承認するものである事を警告し、

そうして従来日本の人間の生きた信条として

居る儒教に基礎を求めて居る他愛的な道徳、

現に民衆の心を風靡し動もすると其の行動をすらも律し勝な権力への

隷属道徳の観念が実は純然たる仮定の上に現れた錯覚であり空ろなる

幻影に過ぎない事を人間に知らしめ、それによって人間は完全に

自己の為に行動すべきもの宇宙の創造者は即ち自己自身である事、

従て総ベての<モノ>は自分の為に存在し全ての事は自分の為に

為されねばならぬ事を民衆に自覚せしむる為に

 

私は坊ちゃんを狙って居たのであります。」

 

「私等は何れ近い中に爆弾を投擲することによって

地上に生を断とうと考えて居りました。

私が坊ちゃんを狙ったと云う事の理由として

只今迄申上げました外界に対する宣伝方面、

即ち民衆に対する説明は実は私の此の企私の内省に稍々著色し

光明を持たせたものに過ぎないのであって、

取りも直さず自分に対する考えを他に延長したもので、

私自身を対象とするそうした考えが

即ち今度の計画の根底であります。

私自身を対象とする考え、

私の所謂虚無思想に就いては

既に前回詳しく申し上げて置きました。

私の計画を突き詰めて考えて観れば、

消極的には私一己の生の否認であり、

積極的には地上に於ける権力の倒壊が

窮極の目的でありました。

私が坊ちゃんを狙ったのは

そうした理由であります。……

 

私は今後も為たい事をして行きます。

其の為たい事が何であるかを

今から予定する事は出来ませぬが、

兎に角私の生命が地上に在らん限りは

<今>と云う時に於ける最も<為たい事>から

<為たい事>を追って行動する丈は確かであります。」  

第十二回予審訊問調書 
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by pugan | 2011-06-21 05:32